各信託銀行でそれぞれ商品サービスの名称を付けてパッケージ商品化していますが、これは法律的な意味の「信託」かということについてお話をします。
結論から申し上げますと、「遺言信託サービス」は、信託法を根拠とする法律的な「信託」ではありません。
これは、≪遺言公正証書作成コンサルティング+遺言書保管業務+遺言執行業務≫という一連のサービスを総称した商品名で、その内容は、いわば「銀行が遺言書の作成と執行を担うサービス」ということになります。
遺言書作成と遺言執行の業務は、通常の法律専門職(弁護士・司法書士・税理士・行政書士等)が担える分野であり、信託銀行でないとできない「信託」の要素はありません。
信託銀行の信用力を背景にした「遺言書作成・執行」サービスについて、否定をするつもりは毛頭ありませんが、あくまで作っているのは「遺言書」に過ぎない訳で、これからの老親の生活・介護のサポート、財産の管理・活用・処分に対するニーズに、「遺言書」では一切対応できません。
信託銀行に「遺言信託サービス」を申し込んで安心しているご高齢の方々が相当数いる中で、そのサービスだけでは、「これからの老親の生活・介護のサポート、財産の管理・活用・処分には一切対応できていない」ということを認識ている方が実に少ないことが問題です。
そこで、「遺言信託サービス」で対応できない部分、今現在から相続発生までの生活支援と財産管理を担う1つの方策が「家族信託」ということになります。
「家族信託」をうまく活用することで、成年後見制度も遺言もいらなくなるケースがありますし、場合によっては、信託銀行の「遺言信託サービス」自体も「家族信託」で賄えるということで解約される方もいるという現実があります。
優先順位としては、今から始まる生活支援と財産管理の体制を整えることを優先していただき、その後に資産承継、つまり遺言の内容を検討するというのが本来取り組むべき手順だと考えます。